「何のためにやるの?」と「もっと良いやり方ない?」を問い続ける
常に新しいやり方を探し続けることが進化につながる
最近、小学生のランドセルの話が話題になっています。
私には中学生の娘がいますが(小学生ではなくなってしまいましたが)、教科書でかなり重くなった鞄を毎日背負って登校しています。
小学校時代も結構な荷物を持って行っていました。
この問題を解決するために、小学生がランドセルをキャリーにした「さんぽセル」を売り出しました。
「賢い小学生がいるな~」と私は思いましたが、この件がYahoo!ニュースで発表されると、1000件以上の批判コメントが来たそうです。
- ランドセルは子どもが転倒した時に頭を打たないためにあるんだ!
- 成長期の子どもがキャリーを引いて歩いたら体のバランスが悪くなって背骨がゆがむ!
- ランドセルは毎日背負って歩くことで下半身が鍛えられるのにもったいない!
- キャリーでは突然走ったり、止まったりという子どもの動きに対応できない、かかとがぶつかり事故の原因になる!
- ランドセルについている防犯ブザーが体から離れている。キャリーと引き離されたら簡単にさらわれる!
- キャリーを引きずってたら、不審者に追いかけられた時に逃げにくい!
詳しくは以下のサイトが良くまとまっています。結構面白い記事です。
で、これらの批判はまた小学生から反論されているようです。これまた小学生が素晴らしい。
こういう、ちょっと考えればすぐに反論されてしまうような批判をするタイプの人は
「ランドセルを背負う」
ということ自体を変えたくないタイプ、つまり、以前からのやり方を変えることが許せないタイプなんだと思います。
また
「小学生がキャリーなんて許せない!」という思いもあるかも。
ランドセルを背負うというのは、その姿が小学生らしいということもあると思いますが、小学生ができるだけ負担なく荷物を学校に運べるようにするという目的があるはずです。その手段としてランドセルがあります。
なのにいつの間にかランドセルを背負わせるという、もともとは手段だったことが目的となり、もともとの目的である荷物をできるだけ負担なく運ぶということに思考が回らなくなってきている状態です。
ちなみに、ランドセルの歴史を調べると、最初は伊藤博文が当時の皇太子(大正天皇)に送ったのが初めで、かっこよかったので徐々に広がったようですが、当時は贅沢品だったので庶民は布製ショルダーバッグ等を使っていたそうです。最初は必ずしも今のランドセルを使っていたわけではなく、荷物を運べるものなら何でもよかったんですね。
この現象と似たことは企業経営でもよくあります。
企業における業務は、企業経営に貢献する何かの目的があって、それを実現するために手段であるはずです。
ところが、いったん手段が出来上がると、その手段を行うこと自体が目的となって、本来果たさなければならない目的がないがしろになるというものです。
例えば、(実際私がコンサルティングの現場で経験したことですが)
何の目的なのかが不明確な会議
誰が使っているかわからない資料作成
社員の成長に全くつながらない研修
等です。
コンサルティングの仕事をしていると社内の会議に出させていただくことがよくあります。
生産性が低い会社の会議でよくあることが、報告資料を順番に読み上げていくという会議です。
会議自体はほぼ読み上げて終わり、特に議論があるわけではなく、上長が「今週も頑張ろう」みたいな意味があるのかないのかわからない発言をするという会議です。
「情報共有だけなら全員が集まる必要はないので、社内チャットシステムで共有して、読み終えたらいいねボタンを押すというルールに変えてはどうですか?」
と提案すると、大変な抵抗が来ます。
会議で全員で読み合わせるから意味がある
文書では意図が伝わりにくい
挙句の果てには
社内チャットシステムだといつ連絡が来たかわからない、、、。
などという、今は何時代なんだと思わせるような言い訳も出ます。
こういう批判こそ、「手段が目的化している状態」ということです。つまり、会議をすること自体が目的で、それを変えたくないというタイプです。
情報共有自体は必要な業務ではあるのですが、それをやるには他に良い方法があるはずですが、それを認めたくないということです。
こういう新しいやり方に反対するタイプの人は、過剰に今までのやり方のメリット伝えたり、新しいやり方のリスクを過大評価します(前回のコラムでも触れました)。
その結果、なかなか新しやり方が進められないということになります。
こういう状態が続くと
・目的がわからない業務がどんどん増えていき、
・改善しようとしても過去のやり方が重視されるため否定され続け
・そのうち誰も改善しようと思わなくなり
・収益性がどんどん低下していく
ということになります。
特に中小企業の場合、経営リソースが全く足りていません。そのような厳しい状況の中で無駄な業務をやっていると収益性を悪化させるばかりか、社員のやる気まで削いで行ってしまうことになります。
常に
「この業務は何のためにあるんだろうか?」
「この目的を達するために、今のやり方より良いやり方はないのか」
と問い続ける姿勢を持つことが重要です。経営者には社員がこの姿勢を持ち続けられるようにサポートすることが求められます。
手段に捕らわれず、目的が何かを追求していけば社内の業務水準は必ず進化します。
こういう姿勢こそが持続的成長経営に必要な姿勢だと言えるでしょう。
今一度、「この業務は何のため?」、あるいは「もっと良いやり方はない?」
と問うてみてはいかがでしょうか?
そうじゃないと小学生に偉そうにものを言えないかも?
最初の話題に戻り、ランドセルの件ですが、さんぽセルを認めるなら、もう思い切ってキャリーバックありにしてもいいのではないかなと思います。
成長途中の体にあまりにも重い荷物を毎日背負わせるのは健康面でどうかなと個人的には思っています。
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