第020話 自責か他責か
自責か他責か
先日、とあるメーカー経営者の方と面談をさせていただきました(経営者Aさんと呼ぶことにします)。
Aさんの会社は社員が10名程度なのですが、何とこの2年の間に半数以上の社員が入れ替わったそうです。
退職した社員の中には長年信頼してきたベテラン社員や、かなり高額な費用をかけて採用・研修をしてきた若手社員数名が含まれるそうです。
10名程度の会社でたった2年の間に半数以上の社員が退職するというのは極めて大変な事態だということは想像に難くないと思います。経営者Aさんもさぞショックだっただろうと、、、。
「社長、大変だったんではないですか?」と聞くと、
「はい、毎日眠れませんでした。会社の何に不満があるのかと思うこともありましたが、振り返れば、私に原因があったと思います。もっと社員とよく話をしておくべきでした」と仰っておられました。重い言葉でした。
一方、医療機器商社を経営されるの経営者Bさんとも面談する機会を頂きました。
この会社もAさんの会社と同じ規模くらいで10名程度の社員数です。この会社さんと面談すると、
「うちは取引先が全然イケてなくて、またうちの営業もしっかり動かんから全然業績が良くなりません。気合入れて動けと取引先や営業社員には言っているのですが、全く改善しません。ほんと能力の無さに呆れます、、、。」
といった感じでした。さらに、
「ちょっと資金が苦しくなってきたので、出口さんのお力で何とか資金調達できませんか?専門家ですよね?」といったご相談を受けました。
先の経営者Aさんの会社と、この経営者Bさんの会社、現状は売上規模としては同じくらいなのですが、今後どちらが成長すると思われますか?
私は経営者Aさんだと思います。
その差はどこにあるか。
それは、「自責」としてとらえられるか、「他責」と考えるかの違いだと思います。
では何故他責ではなく、自責のほうが経営者として成長するのでしょうか?
一般的によく言われているのは他責にしていると原因を全て外部に帰着されるので、自ら改善する方向に進まないと言われています。
私もこの考え方には一理あると思います。
経営者Aさんは社員が大量離脱したことを自らに原因があると考え、その後自分の行動に変化をもたらし社員の方々と積極的にコミュニケーションをとられています。単に社員の機嫌をとるために話をするのではなく、自らの考えを伝え、また社員の考えも聞くというスタンスに変えられたそうです。
その結果、残ってくれた社員はよりイキイキと働くようになり、また優秀な社員の方が新しく加わってくれるようになったそうです。
一方、経営者Bの方は、改善の方向性を取引先や社員がもっと動くように、あるいは外部に任せっきりで資金調達をすることで、時間稼ぎをしようとしているわけですね。
結果に差が出るのは当然だと思います。
また、これだけではなく、自責と他責では結果において大きな差を生む別の点についても考えてみたいと思います。
それは何だと思いますか?
私は、「協力者を得られるかどうか」だと考えています。
成功する経営者には、周りに協力者が数名はいるものです。
周りの人から見て、サポートしてあげたくなる経営者ってどんなタイプかというと、周りのせいにせず、自ら改善に進んでいく人ではないかなと思います。つまり、自責の考え方を持っている経営者です。人を巻き込むためには経営者自身の人格や目指すビジョン等も大切な要素ですが、このように自らに原因を追い求めて努力していく姿というのも大変重要な要素だと思います。
実際、私が経営者Aさんの過去の苦労話から現在の取り組みのお話しを聞いている時に、「この経営者をサポートするために、私に何かお手伝いできることはないかな」と純粋に思いました。また、「社員の方がより充実して働けるように何かお役に立てないかな」とも思いました。経営者Aさんの考え方が私を巻き込んだんですね。やっぱり頑張っている人を応援したいという気持ちは人として当然かと。
一方で、経営者Bさんとお話ししている時は、(本当は良くないことなのですが、私も人間なので、)「まずは自分で努力なさったらどうですか?」と思ってしまいました(口にはしませんでしたが)。正直、話を聞いているのもしんどいような内容で、、、。一緒に仕事したくないなと思ってしまいました。
つまり、
・自分で必死にもがいて壁を突破しようと努力する
・その努力している姿を周りが見て協力しようとする
・その結果、自らの努力に周りのサポートが加わり、より良い成果を出す
ということではないかと思います。
もちろんどこまで自責で考えるかについては程度問題はあるかもしれませんが、経営者であるならば原因を他人に押し付けることなく、「自責」の考えを持って経営に臨んでいただきたいと思います。そういう経営者こそが会社を継続的に成長させられる経営者だと言えるでしょう(経営者に限らずビジネスマン全体に言えることですが)。
(茶屋町のスタバにて)
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