第016話 志とは
志とは
先日、映像作家の保山耕一さんの講演を聞く機会がありました。
経営の世界にいる者としても非常に勉強になる講演で、色々反省、また考えさせられることが多い講演でした。
保山さんは情熱大陸や世界遺産を担当する一流のフリーカメラマンとして活躍されていましたが、2013年8月、直腸がんが見つかり、放置すれば2か月の余命と宣告されました。幸い良い病院と出会いことができ、命は取り留めたものの、手術の影響で仕事は全てなくなりました(競争が激しい世界なので、ライバルたちが全ての仕事をとっていったそうです)。
ライバルに負けないように、これまでほとんど休むことなく自分の技術を磨き続けたそうです。長年の努力が実って、フリーカメラマンとして不動の地位を築き上げた矢先にガンが見つかったそうです。その悔しさは想像を絶しますよね。
手術後、保山さんはリハビリをかねて、今まででは考えられないようなシンプルな機材(病気の関係で思い機材が持ち運びできないため)で地元の奈良県の吉野の撮影をしはじめました。その撮影をずっと続けていると、今までには感じられなかったことが保山さんの身に起こりました。
それは何かというと、今までにはあまり出会えていなかった「心ある人」が、特に求めているわけでもないのに集まってくれるようになったそうです。
その中には地元の一般の方から著名な僧侶さんまで、幅広い方との出会いがあったそうです。その出会いが保山さんを変えたそうです。
保山さんは次のように仰います。
「どん底の時に出会う人こそが自分を変えてくれる」
保山さんの吉野の撮影は、特にギャラが発生するわけでもなく、自分がその美しさを残したいから、そういう思いで撮影をされ続けたんだと思います。きっとその思いが多くの人に届いたのでしょう。
保山さんは自分ができる範囲の撮影をその後もコツコツと続けられています。病気が再発しても、できる範囲でコツコツ撮影されています。その映像を見られて何かを感じ、涙する方が数多くおられるそうです。保山さんの映像に真心がこもっているからなんでしょうね。
プロカメラマンとしてテレビ界で活躍されていた保山さんが、簡単な機材で地元の写真を撮り続けているというのは一見すると「残念」というように思ってしまうかもしれません。
しかし、保山さんはこの活動を通じて自分が人の役に立っていると今まで以上に実感でき、もしも自分の役割というものが与えれているとするならば、映像を通じて人さまのお役にたつことこそが自分の役割ではないかと考えたそうです。
日々できることをコツコツ積み重ねる、「明日死んでもいい」と思えるような活動に集中する、それこそが大切だと仰っていました。「心の中にある火に薪をくべる活動、どうしてもそれをやりたいこと」、それこそが「志」だと。
経営において「志」が大切だとよく言われます。私自身もそう思います。
経営をするにあたって、また起業するにあたって、自分が「コツコツと積み上げたいものは何か」、「自分が集中するべきことは何か」ということを経営者は考えるべきだと再認識しました。
志という言葉を使うと、何か大きなことを考えなければいけないと思いがちです。大きなことを考えることは決して間違っていないと思いますが、「コツコツと自分がやるべきことに集中する」ということも立派な「志」だし、それにより大きな仕事を成し遂げることは十分に可能だということは保山さんの作品が教えてくれています。
保山さんのように「自分の人生をかけてやりたいことが何であるのか」、自分でも考え直してみたいと思いました。本当のプロフェッショナルは業界が違えど学ぶべきところは無限にあると感じました。
最後に保山さんから私に頂いたメッセージをご紹介します。
「私は今回の経験を生かし、明日からまた、自分に出来ることをコツコツと積み上げていくつもりです。 終わりの終わりがやってくるまで、そのことは変わらないと思います。」
保山さんは現在も闘病中です。是非ガンを克服されて、1つでも多くの映像作品を残してほしいと思います。
最後に保山さんの映像です。是非見てみてください。心にグッとくるものがあります。
映像中の桜の最後の花びらが散るシーンは6時間もタイミングを待って撮影されたそうです。かつ撮影の前日は絶食して行かれるそうです。
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