中小企業が投資効率を上げるたった一つの方法
ここ最近、新聞やテレビでもDXという言葉を聞かない日はないくらい
ブームになっています。
日本の中小企業のデジタル化が進むのは大変喜ばしいことだと思う反面、
心配になる面もあります。
今のDXブームを見ると、約25年前(かなり昔ですが)、私が社会人に
なったばかりの際に経験したERPブームを思い出します。
ERPとはEnterprise Resource Planningの略で、
「社内の全てのデータが連携して経営が効率化する」
という触れ込みで多くの大企業に導入されていました。
主に外資系ソフトメーカーの製品に対し、数億円から数十億単位の資金を
多くの企業が投資していました。
ERPを導入する際は一部の業務の変更や新システムの使い方やルールの
教育等、多大な手間が発生するのが通例で、導入担当者からすれば、無事
導入を成し遂げることが大変重要な仕事になります。
その仕事は複数の部門にまたがることが多く、意見調整や変更だけでも
大変な手間なので導入が終わった段階で担当者だけでなく、社内全体としても
「ホッとする」空気が流れることがありました。
担当者の立場だと達成感を得ることは納得できますが、この達成感が全社に
広がってしまうと経営としては問題があります。
企業活動において全ての投資は、いずれかのタイミングで、かつ何等かの形で
P/Lにプラスの効果を出すべきです。プラスの効果が出ない投資は企業活動に
おいては原則として失敗です。
中小企業の経営現場を経験する中で、このERPの事例のように、投資するだけで
満足してしまっている企業がかなりの割合であります。
・新しい機械を導入した
・新しい人材を採用した
・新しいITシステムを入れた
等、企業活動においては多くの投資が必要です。
しかし、その効果を検証できているでしょうか?
今のDXブームも同様で、システム会社やコンサルタントは導入を強く
勧めてきます。
「今導入しないと、他社に後れを取りますよ」
という売り文句を様々なところで聞きます。
その際に、「効果検証をしっかりやりましょう」等と言ってくれるシステム会社は
ほとんどありません。
私個人としては中小企業のデジタル化は非常に重要だと考えていますが、デジタルを
入れれば何事でもうまく行くということはありません。
DXという流行り言葉に魅了されて、何かツールを入れると高い効果が自動的に
出るのではと考える経営者がいるかもしれませんが、それは完全に幻想です。
・この機械が導入されることにより生産性がどれくらい上がり、どのような
販売効果、あるいはコスト削減効果があるのか
・新しい人材はどれくらいで戦力化し、自社の戦略遂行にどのように貢献するのか
・新しいITシステムは販売、生産、業務をどの程度効率化するのか
という目標を立てた上で、導入後その目標に合っているのかどうかを必ず検証しま
しょう。
この検証なしでは投資効率を上げることは相当に困難です。
先日、ある経営者さんから
「投資は結構しているはずなんですが、利益率が全然上がらないんです、、、」
という悩みを相談されました。
残念ながらこの企業さんは投資に対する検証をほとんどしていませんでした。
(※導入担当者さんの苦労を目の前で見ているので、それだけで「お疲れ様!」
という気持ちになってしまってなかなか検証までいけなかった、ということです。
人情としては非常に共感するところではありますが、、、)
この課題の改善策としてこの経営者さんに以下のサイクルを提案しました。
1.投資の実行(予算通り、スケジュール通り導入できているか)
2.投資後の実績把握(回収期間やNPVの計算)
3.当初目標との差分把握
4.差分が発生する理由の把握
5.対策の立案と実行
この2~4番はサイクルで回します。
これを実施すると、確実に投資効率は上がります。
せっかく投資をしたのに、従業員にその使い方が十分に教育されていない
ため
「使いにくい」
との評価になり、結局前のやり方に戻る、という、信じられない
事態が起こっている中小企業は数多くあります。
投資に対しては導入だけで満足することなく、その効果を検証し、差分を図り、
その理由を把握したうえで修正を繰り返す、というプロセスを回し続けましょう。
これが投資効率を上げるたった一つの方法です。
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