業務効率化の第一歩は期待役割の明確化
ここ最近非常に暑い日が続きますが、こんな暑い日々の中でも私は自転車で事務所まで行くことがよくあります。
コロナ騒ぎの中で、電車に乗らなくて良いというのもありますが、一番のメリットは乗ってて気持ちいいという点です。
自転車に乗っていると、時々驚くようなシーンに出くわします。
先日も夜、自宅に戻るために自転車に乗っていると、前を行っている自転車の動きがどうもおかしいなと感じました。
近づいてみてみると、スマホの操作をしながら自転車を運転してて、しかもライトをつけていないという状態でした。
「危ないな~、これ、いつ事故になってもおかしくないな」
と思いながら見ていたんですが、これが意外と事故にならないんですね。
ある意味スゴイなとは思いましたが、事故にならない原因は明確で、スマホを見ながら自転車に乗っている人のテクニックが優れている訳でもなんでもなく、単に周りの人が気を付けて、スピードを落としたり横に避ける等の対策をしていただけでした。
普通に自転車に乗っている人からすると迷惑な話で、本来ならやる必要がない減速や進路の変更を一部の人のために実施しているということですね。
つまり、事故が起こらないのは、ルールをみんなが守っているからではなく、ルールを守らない人のカバーを誰かがしているから、ということです。
実はこれと構造上同じことが企業経営でも起こります。
例えば、部門間の仕事の連携において、ある部門は自部門の都合だけを考えて業務を行ったとします(部門Aとします)。
自部門の都合が良い業務のみを実施するため、本来やるべき必要な業務の全てが実施されることなく、一部の業務が放置されたままということが起こりえます。
普通に考えると何かトラブルが発生しそうですが、すぐにはトラブルになることはそう多くはありません。
その理由は、他の部門が、部門Aがやるべきなのに放置されている業務をカバーするからです。
このカバーしている部門(部門Bとします)は、会社のためを思って「自分達の仕事ではないのに」と思いながらもその仕事を実施します。
中小企業の場合はどの部門もお互い助け合わないと成り立たないという背景はありますが、この状態が長く続くと部門Bへの業務負荷が重くなり、
・ミスの発生が増えてくる
・仕事の納期が長くなる
・業務負荷が重くなり、残業が増える
等が起こり、その結果、離職者が増えるということも起こりえます。
また、この状態が長く続くと、部門Aは部門Bに負担をかけているという自覚が薄くなり(最初からないケースも多々あります)、そのうち自分達がやるべき仕事だということを完全に忘れて部門Bがやるべきだという空気になってきます。
よくあるのは、部門Aに声の大きい管理職の人がいて、サポートのつもりで部門Bがやっていたのに、いつの間にかその仕事のメインが部門Bとなり、業務を部門Aに戻せないというケースです。
このような状態になると、部門Aは仕事が楽になり、部門Bは仕事がさらにきつくなります。
その結果、部門Bの仕事は回らなくなり、ボトルネック化して会社全体の生産性を下げてしまいます。
こうならないための対策として
「各部署の期待役割を明確にする」
ということを意識しましょう。
新しい仕事ができた場合でも、どの部署がどこまで責任をもってやるのかを明確にしましょう。
ここを曖昧にしてしまうと、部門間での業務負荷に大きな差が出たり、最悪のケースは必要な業務なのにどの部署もやらない、
ということが発生します。
このような事態を避ける具体的な方法として
1.業務の洗い出しを行う
2.どの部署がどの業務をやっているのかを調査する
3.なぜその部署がやることが最適なのか理由を明らかにする
4.そもそも、その業務自体が必要かどうか判断がつかないものは、思い切って止める
(何の付加価値を出しているのか、誰の役に立っているのかが明確ではないものは廃止対象。また重複している業務も廃止)
5.以上を調べた上で、各部門が責任を持つべき業務を明確にし、役割分担を行う
というプロセスを踏んでもらうようにしています。
結構手間がかかるプロセスですが、これを実施することで不要なコストの削減につながると同時に、平均としての従業員の負荷を減らすことができます。
これはキャッシュフローに対してのプラス効果がありますし、従業員の離職を減らすことができ、採用や教育のコスト、またノウハウの蓄積という意味で企業業績に貢献します。
もしも
「当社には業務の流れがうまく行ってないのではないか?」
との考えをお持ちなら、全社として無駄をできるだけ排除し、効率的に業務遂行をするという共通目的を全社員に伝えた上で、各部門の期待役割を再度見直してみるというのも有効な策です。
中堅、中小企業の経営において縦割り的な考え方は必ずしもプラスにはなりません。緊急時や非常時における各部門の助け合いが必要なことは言うに及びません。しかし、この助け合いが「馴れ合い」や「押しつけ」になっているとしたら、企業が持つポテンシャルの邪魔をしていることになります。
このようなことにならないためにも、まずは果たすべき役割を明確にしましょう。
部門の役割が明確になれば、同じプロセスで各部門の個人について期待役割の明確化が可能になります。
スマホを見ながら自転車に乗る人のように、安全を他人の善意に頼るのではなく、自ら期待役割を明確化し、効率的に組織を運営していきましょう!
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