第32回 中小企業経営者が行うべき不況への備え(第三弾 組織編)


コロナ情勢は緊急事態宣言が出るほど悪化しており、今の段階ではその出口の兆しすら見えておりません。中小企業経営者の皆さんにとっては大変頭が痛い時期が続きそうです。
 
 
前回のコラムでは「中小企業経営者が行うべき不況への備え 第二弾」として業務プロセス面の対策をご紹介しました。
 
 
今回は第三弾としてこのコロナ不況を乗り越えるために組織面で実施するべき施策について書きます。
 
 
組織面の対策はこれまで書いてきた営業面や業務プロセス面の対策とと比較するとはキャッシュ面で即効性があるものは少ないです。しかしながら、コロナの影響が収束した際にいち早く業績を回復させるには組織面の充実が不可欠です。
 
 
今回のコラムではいち早く業績を回復させるために必要な施策を中心にご紹介します。
 
 
1.まずはスタッフが感染しないための対策をとる
 
 
これは、コロナ収束後の業績回復というよりは、今、起こりうるダメージを最小限にするという目的が強い施策です。
(スタッフの健康と安全を守ることは会社として基本的なことなので、それに加えてという理解をしてください)
 
 
万が一スタッフに感染者が出ると、自社の事業所や工場等の稼働をストップさせなければならなくなる可能性が出るだけでなく、取引先へも影響を出してしまうことが考えられます。感染は全てコントロールできるわけではないとはいえ、取引先に損失を出させてしまうとその後の取引に影響を出してしまう恐れがあります。
 
 
もちろん今働いてくれているスタッフを守る意味もありますが、それだけではなく取引先との信頼関係を維持するという意味でも感染対策は十分に行いましょう。
可能な限りのテレワークへの移行、MTGの削減、換気・手洗い、マスクの着用くらいは最低限として、十分に対策しましょう。
 
 
また、感染対策を十分に行うということはスタッフに対しても重要なメッセージとなります。
感染のリスクに不安を感じながら業務を継続しているスタッフは少なからず存在します。このようなスタッフに対し会社として感染防止のガイドラインを示し対策を徹底することは、会社がスタッフの健康を重要と考えているということ示すことになります。
これによりスタッフに安心感を与え、スタッフの会社に対するロイヤリティも上げることができます。
 
 
まずは第一歩目の施策として、感染者を出さない対策を徹底しましょう。
 
 
2.スタッフ面談を実施し今後の継続的協力の要請と日常業務における意見収集を行う
 
 
普段は業務が忙しくてスタッフ面談を実施できていない企業は是非この機会を活用して面談を実施してください。
 
 
スタッフ面談では、「今後のさらなる協力の要請」と「日常業務に関する課題の傾聴」の2点を重点的に行います。
 
 
〇今後のさらなる協力の要請
1で述べた会社としての感染対策をスタッフに説明することに加え、苦しい状況を乗り越えるためにはスタッフのこれまで以上の協力が必要だということを伝えましょう。このコラムの第一弾と第二弾で述べた対策を実施するに当たってはスタッフの協力は必須です。この重要さを伝えましょう。
 
一般スタッフの大部分は今回のコロナ騒動が業績にどの程度影響を与えうるのか十分には理解できていないため、経営者が持つ危機感と一般スタッフが持つ危機感には大きな乖離が生じることが多くあります。この乖離を埋めて全社一丸となってこの不況を乗り切らなければならないのですが、共通の危機感がなければ全社一丸となって各種の対策を進めることは難しくなります。
 
 
過度に危機感を煽ることは良くありませんが、少なくともこの1年は今まで以上に危機感をもって仕事に取り組むことが必要だということを面談を活用して伝えましょう。「一緒にこの危機を乗り越えよう!」ということを伝えてください。
 
 
〇スタッフが日常業務で感じる課題についての傾聴
また、面談では会社からの協力依頼だけでなく、スタッフが感じている日常業務に関する課題についても耳を傾けましょう。
 
 
日常業務については経営者よりもむしろスタッフの方が細かい点まで課題を把握しています。普段はなかなか経営者に言えないようなレベルの課題から、業務上大きな支障になっている課題までスタッフの意見を傾聴し、業務改善のヒントを得ましょう。
  
ただし、聞き方には以下の注意が必要です。
 
 
・「それは違うだろう!」と経営者が感じる意見が出てきますが(単なる不満や怠慢のような話)、その場面では否定や反論はしません。
これをしてしまうとそのスタッフは「どうせ否定される」と考え、二度と意見を言わなくなります。
 
 
・「何でも不満を言ってくれ」というスタンスでは聞いてはいけません。あくまで日常業務についての課題を聞きましょう。
不満を聞くというスタンスで話を聞くとスタッフは「不満を改善してくれる」と無意識に思ってしまいます。当然ながらスタッフの不満をすべて解消するということはそもそもの目的とは違いますし、実際全ての不満をなくすことは不可能です。
 
 
「不満を言わせておいて、改善されない」とスタッフが感じてしまうとそのスタッフは大きくモチベーションをダウンさせて、結局マイナス効果しか出ません。
 
 
あくまで前向きな改善を進めていくための課題を聴くようにしましょう。
 
 
3.組織の見直し・適正人員・配置換えを行う
 
 
このコラムの第二弾で書いた業務面での対策を実施すると、それぞれの部署の役割や必要人員数が変わることがあります。
さらには、組織図自体が変わることも起こりえます。社内向けの仕事は極力最小限に抑え、社外に向けた仕事の量と質を担保できる組織体制を考えましょう。
 
 
適正人員を再検討して余剰人員が出た場合、営業機能を強化できるような配置転換を原則として考えましょう。
コロナは近い将来収束することが予想されますが、コロナから来る不況はしばらく続くでしょう。その結果、売上が簡単には上がらない時期がしばらく続きますので、この時期に営業機能を強化しなければ企業としての存続にかかわります。このコラムの第一弾(営業編)の内容も参考にしていただき、コロナ後の強い組織としてあるべき姿を再構築して下さい。
 
 
また、雇用形態の柔軟化を進めるにも良い時期となります。家庭の様々な事情により(例えば子育てや介護)時短を希望しているスタッフが存在する可能性があり、このようなスタッフの離職を防ぐためにも雇用体系の柔軟化を進めることは効果があります。
 
また、コロナ収束後の採用活動においても雇用の柔軟化は効果を生みやすい施策です。
 
 
4.普段出来ていない社員教育を行う
 
 
社員教育を十分に行えている中小企業はほとんどありません。いまだに「見て学べ!」というスタンスの企業はたくさんあります。
これは時代に合っていないばかりか、ただでさえ資源が少ない中小企業においてその能力を無駄にしているだけです。
 
 
コロナ不況で受注量が減ることは大変なことですが、業務量が減っている間に通常ではできないOJTを実施しましょう。
トップが率先して若手に教育する姿勢を見せることが幹部や上司の行動を変えます。トップから教育を強化しましょう。
 
 
中小企業では一部の有能なスタッフに仕事が集まり過ぎてしまうということがよくありますが、このスタッフの業務能力が組織全体のボトルネックとなります。スタッフ全体の能力アップにより業務負荷を分散させ、組織全体としての業務能力を向上させましょう。(残業の削減にもつながります)
 
 
また、中小企業ではITが十分に活用できていないところがほとんどです。最近はオンライン教育で質が高いものが安価で受けられます。
 
また、便利なツールもたくさん出ています。社内でのドキュメンテーションや数値分析等はITの活用によりかなり効率化できます。IT教育を強化して会社全体の生産性を向上させましょう。
 
 
5.賃金見直しを実施する
 
上記の1~4までの施策や、これまでのコラムの第一弾と第二弾で提案した施策を実施しているという前提で、それでも十分ではないという場合、スタッフの賃金の見直しを検討します。この施策は最後の手段という位置づけで、最も実施したくない施策です。
 
 
賃金の見直しはスタッフのモチベーションダウン、経営陣への不信、最悪のケースでは退職につながるリスクがあります。
従って、この施策を実施する際にはまず経営陣の賃下げを実施した上で、スタッフの賃金見直しを実施します。
 
自分達の処遇は維持する一方で、スタッフの賃金だけ下げたり、リストラしたりする経営者が少なからずいますが、このような経営者のもとでは強い組織を作ることはできません。また、改善の施策を十分に行う努力もせずに単に人件費だけを切り詰めようとする経営者も同様、強い組織をつくることはできません。
 
 
スタッフに痛みを依頼する場合は、まず自らが身を切る施策を実施した上で行いましょう。
 
 
 
番外編
上記の5つの施策に加え、これまでコラムで紹介した内容の全てを実施したとしても企業の存続が難しいと感じる場合、適切な段階でのM&Aを検討しましょう。望ましい選択肢ではないかもしれませんが、判断が遅くなることはM&Aにおいて買手企業の発見や条件に大きなマイナスの影響を与えてしまいます。冷静に現状の分析をして(専門家の意見を聞くことを含め)判断しましょう。
 
なお、当社では組織強化のコンサルティングや、M&A時の売却価格(時価総額)を向上させるための改善コンサルティングを実施しております。結論が出てからではなく「どうすればいいか判断に悩む」という段階から相談することをお勧めします。
当ホームページの問合せページよりお問い合わせください。

 


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